アメリカの音大(大学)と日本とどう違うの??
という疑問がある方へ。
まず、日本の音大のイメージをそのままアメリカの大学に投影することはできませんよ!結構色々な違いがあります。
私の実体験から、アメリカの大学で音楽を学ぶメリットは次の8つになるかと思います。
- 初心者OK!
- ほとんどの大学で音楽が学べる
- 先生の専門性が高い
- あらゆるジャンルがある
- 音楽を幅広く、多角的に勉強できる
- 音楽の専攻の種類が豊富
- 表現、個性が重要視される
- 実践できる場が多い
※必ずしも列挙したもの全てが個々の音大、大学に当てはまる訳ではないです。
特に「初心者OK!」とか、「ほとんどの大学で音楽が学べる」というのは、驚きの話ではないでしょうか。これらはアメリカらしい特徴だと思います。
本記事では、音楽留学のためにアメリカの大学を100校近く自力で調べ上げ、実際に音大に入学→転校→転科→卒業した筆者が、実体験からアメリカの大学で音楽を学ぶメリット8つについて解説していきます。
1. アメリカの大学へ音楽留学するメリット8選
(1) 初心者OK!
当たり前ですが、国が違えば文化や教育システムが違います。
日本の大学は、ある程度、その専門分野に通じていることが入学の前提となるかと思います。入試は、その素養があるか見ている訳で。
対して、アメリカの大学は、はじめてのことを基本からしっかり教えてくれる場所であり、将来の方向性を決めたり、社会へ出る準備をする場所、というイメージ。日本のような入試など無いし、事前に専門の知識や技術がなくても良いんです。
だから音楽を全くやったことのない人でも、アメリカの大学なら音楽を学ぶことができます。あなたが何歳でも、どんなレベルでも、丁寧に一から教えてくれるんです。
例えば、それまで歌ったことのない人がVoiceを専攻したり、ピアノをやったことがない人が実技でバイエルンからやるってことが普通にあります。
私はContemporary Musicを学べるMcNally Smith College of Musicに入学した当初、驚いたことがあります。
1学期目の音楽理論で五線譜や音符から教えてくれたんです。実際、学生は楽譜よりコードに親しんでいて、譜面を読めない人が多かった。キーボード専攻でも、コードでは弾けるけど、クラシックのようにアルペジオで弾けない、テクニカルに指を動かせない人もいました。もちろん、圧巻のパフォーマンスをする人たちもいたし、初心者でもすごい勢いで上達する人もいました。色々なレベル、個性の人がいました。
McNallyのプログラムは、そんな初心者の人でも大学にいる間に音楽業界で生き残れる知識やスキルを与えてくれるものでした。キャリアサポートも手厚かったです。
日本だと小さい頃から音楽教育をガッツリ受けている人が大学で音楽を専攻するのが一般的かと思いますが、アメリカの大学では誰でも音楽が学べます。
実際、同級生には60代の人もいたよ!
誰でも、何歳でも大学で音楽を本格的に勉強できるなんて、とても素敵なことだと思います。
(2) ほとんどの大学で音楽が学べる
日本で音楽を学べる大学は、基本的に音楽大学です。
中には玉川大学のように総合大学で音楽を学べるところもありますが、音大にしろ、総合大学の音楽学部(音楽学科)にしろ、音楽を学べる大学自体が少なく、選択肢が非常に限られます。
一方、アメリカでは音大の他、総合大学やリベラルアーツ・カレッジ、コミュニティ・カレッジ、極端なことを言えばどこの大学でも音楽を学べます。
なぜならアメリカはキリスト教国であり、キリスト教と音楽は不可分なので、
アートは素晴らしい!
音楽は素晴らしい!
という共通認識を持っています。
だから皆やりなよ!
みたいなノリがあるから、どこの大学でも音楽を学べるのかなと思います。
大概の大学には音楽コースがあるので、主専攻は全く別のもの(例えば、コンピューターサイエンスとか、マスコミュニケーションとか)を取りながら、副専攻で音楽を取ることも可能です。
また、転部・転科も簡単です。例えば、数学を専攻していた人が気が変わって音楽をやりたくなったら、途中で音楽専攻に切り替えることもできます。
(3) 先生が豊富、専門性が高い
アメリカは、音楽をやっている人の層がとにかく厚い!
マーチングバンド、バンド、DJ、その他ジャンル問わず独学やプライベートレッスンで音楽をやる人も多ければ、教会で音楽をやる人も多いし、大学で音楽を専攻する人の数も多いです(高校でも専攻できます)。世界の音楽市場を牽引している国でもあるので、実際に音楽業界で働く人も多い。結果、音楽に関わっている人の数が半端ないです。
その中でも、大学の先生は皆、マスターかドクターを取得していて、プロのミュージシャンとしても活動しています。エンタメ界トップに君臨するアメリカで培われた豊富な経験と確かな知識、教える技術、国内外のネットワーク…本気で音楽を勉強したい人にとって、アメリカの大学で勉強する意義はとても大きいです。
私が通ったMcNally Smith College of Musicは、Princeの地元にあったのですが、学校の先生方はPrinceと長年仕事をしてきた人も多く、Whitney Houstonのプロデュースをしていた方もいました。 ミュージカルの世界で活躍してきた先生もいたし、CMや映画音楽をつくってきた先生もいました。ある日にはグラミー賞受賞者が来て特別授業をしてくれたり、どの授業も毎回楽しかったです。そして何より本物のミュージシャンや音楽業界のリアルを知ることができました。
大学で教えるかたわら、自分でテキストブックやアプリなど教材をつくったり、地元でクワイヤー指導をしたり、他の大学で教えたり、地域のためにイベントに出たり、子供たちや教会のために音楽指導・演奏したり、市民ミュージカルを創作、監督、演出、指導したりする先生も多いし、自分の音楽活動に熱心な先生も多くて、自分で曲をつくってレコーディングし、作品をリリースする人もいます。
当たり前ですが、どの先生もプロのミュージシャンであり、ライブやコンサートでパフォーマンスします。また、プロデュース、エンジニアリングやマネジメントなどをしている先生もいます。
私が次に通ったColumbia College Chicagoでも、名サックスプレーヤーのCharlie Parker Jr.と一緒にやってたピアニストの先生、シカゴに来るミュージシャンのマネジメントをしている先生、著名なミュージシャンが来るスタジオを経営・レコーディングサポートしながら、自身もライブ活動や作曲をしたり、他ミュージシャンのマネジメントをしている先生がいました。この学校は講師という立場で在籍する先生がほとんどだったので、いくつかの大学で教えていたり、本業が別にあったり、いくつもの仕事を同時進行でやっていました。
また、一度、New York VoicesのKimが学校を訪問したときに、私たちのアンサンブルを指導してくれました。短い時間でしたが感動の嵐でした!!
こんな風に、大学の先生と言えど、現役感がハンパないです。
(4) あらゆる音楽ジャンルがある
アメリカの大学で音楽を学ぶことのメリット、それはどんなジャンルでも勉強できること!
確かにClassicが一番スタンダードで多いですが、ジャズ発祥の国だけあってJazz Studiesを学べる学校も沢山あります。Jazzを学ぶなら、アメリカは最高の国だと思います。Rock、Pops、Soul、R&BなどContemporaryを標榜して専攻を設けている学校もあります。
ちなみに、私が通ったMcNallyはラップ専攻を設けた全米初の学校だったよ
Contemporary Musicを学べる学校というのは、実はそれ程多い訳ではありません。でも、Jazz Studiesを学べば、Contemporaryは余裕でできるようになりますし、自分のやりたい音楽が学校のアンサンブルにあればそこでできたりします。
Musical Theatre専攻というのもあります。ミュージカルをやりたい人はもちろんのこと、Voiceの学生はステージ上での振る舞いや歌い方、表現を学べるのでマイナーで取る人も多いです。JazzとMusical Theatreには音楽的に密接な繋がりがあるので、そういう意味でも勉強した方が良い分野になります。
また、Church Music専攻もあります。ただ、これは教会のために働く宗教関係者が学ぶ音楽になるので、単に教会音楽やゴスペルが好きだからといって取る専攻ではないです。
他にもFilm Music、Game Musicが学べる学校もあったり、本当に色々なジャンルを学ぶことができます。
(5) 音楽の専攻の種類が豊富
音楽ジャンルが多いのもさることながら、音楽に関わるありとあらゆるものが学べるのがアメリカの大学の良さです。
アメリカの大学は音楽の専攻の種類がとても多いです。まずパフォーマンスではVoiceの他、あらゆる楽器について演奏する術を学べます。
音楽制作(Production、Engineering)など、日本だと独学、個人レッスン、専門学校でしか学ぶ道がないようなものでも、アメリカの大学では専攻分野の1つとして学ぶことができます。
また、Music Business専攻では、どうやってミュージシャンを売るか、マネジメントするか、音楽業界のトレンド、法令など、非常に有益な内容を勉強できます。自分を売り出すためにMusic Businessを専攻する人もいます。ミュージシャンだったら少しでも学ぶべき分野です。
今のところ、日本で音楽ビジネスを学べる大学は聞いたことがないな…
他にも作曲(Composition)、指揮(Conducting)、音楽教育(Pedagogy)、音楽療法(Music Therapy)など様々な専攻があります。
(6) 音楽を幅広く、多角的に勉強できる
前述の通り、音楽と一口に言っても様々な専攻がありますが、興味があれば他の専攻の授業を取ることもできます。
単純に授業を取ることも可能ですし、他分野を副専攻(Minor)で取ったり、ダブル・メジャー(Double Major)で取るという欲張りな選択肢もあります。>>>詳しくはこちら。
むしろ、様々な分野を学ぶことを推奨されます。
音楽プログラムについて言えば、どの分野も基礎の部分は共通していて、基礎が終わると専門性を高めるために各プログラムに沿って勉強します。とは言え、有機的にプログラムがつくられているので、Productionの人も音楽理論やミュージシャンシップ、プライベートレッスンが必須だったり、パフォーマンスの人でもProductionやMusic Businessが必修で組み込まれていたりします。
だから自分の専攻分野しか分かりません、という人はいないです。皆、自分の主専攻以外にも何かしらやっています。
また、あらゆる音楽ジャンルを学べるので、その点からも音楽を幅広く、多角的に勉強できると思います。
McNallyはClassic、Jazz、Contemporary、Musical Theatre等々あらゆるジャンルを勉強できる学校だったので、その点も学びが非常に大きかった!
(7) 表現、個性が重要視される
アメリカという国自体、個性を大事にし、多様性を重んじる国なので、自分を表現してナンボの世界です。
ミュージシャンともなれば、それに輪がかかる訳で。表現に「〇〇せねばならない」はありません。学生たちも自由に表現しますし、
そんな解釈、やり方、表現、そんな音楽があるんだ!
と毎回驚きの発見があります。
また、先生からは、テクニックもさることながら、作品への理解や、何をどう表現するかということを何よりも厳しく指導されます。
(8) 実践できる場が多い
アメリカが世界の音楽業界を牽引しているのは間違いなく、どんなジャンルにおいても世界トップクラスのミュージシャンがいます。そして、そういう方達と接しながら勉強できるチャンスがあるのも、アメリカならでは。
アメリカは産業界と大学が密接に連携しているという特徴があり、音楽分野もそうです。先生のネットワークで有名ミュージシャンに面会したり、バックをやったり、ステージに一緒に立つといった経験をさせてもらえることあります。
しかも音楽がしっかりと根付いている国なので、あらゆるところで歌ったり演奏する機会を得ることができます。
大学の看板アンサンブルともなればツアーもするし、コンクールなどで受賞したりしています。University of North TexasはNorah Jonesがいた大学ですが、ここは非常にレベルが高く、グラミー賞にノミネートされたアンサンブルがあります。
日本の大学ではできない経験ではないでしょうか。
最後に、アメリカの大学へ音楽留学する唯一のデメリットというと、費用の高さになります。下記の記事も参考にしてみてください。