アメリカで音楽を学ぶ素晴しさは、クラシック、ジャズ、ロック、ポップス、ラップ、ブラック・ミュージック、ゴスペル、ミュージカル、映画音楽、ゲーム音楽…あらゆる音楽の超一流の師匠から教えてもらえること。
私は実際にアメリカの大学に留学してみて、日本国内で勉強しているだけでは得られないものが山ほどあると感じています。だから、音楽を志す人がちょっとでもアメリカで音楽を学べたら良いなと思います。
でも、そうは言っても…
音楽エリートじゃなきゃ留学なんてできないでしょ?
そういう思い込みを持っている人がいるかもしれません。でも、それは全くの勘違いですよ。
これから音楽を始めたい!!
そういう人だって、アメリカの大学なら、全くの初心者から音楽を学ぶことができます。
とは言え、ポン!と留学できるなら良いけど、実際には、
時間がない
資金がない
英語力がない
皆さん、様々な事情があります。
本記事では、そういう方へ向けて、日本に居ながらでもできる手軽なものから、正規留学に至るまで、色々なカタチで音楽を学ぶ方法をStep by Stepでご紹介します。正規留学するまでのロードマップとしてもお役立てください。
1. アメリカ音楽留学のカタチ【手軽なものから正規留学まで】
まず、何を勉強しようが、何をつくろうが、ジャンル・仕事の種類に関わらず、レベルに関わらず、ミュージシャンが共通してやることは、様々な音楽を聴いて、自分でも歌ったり演奏したりすることです。
ちなみに、「ミュージシャン」という言葉ですが、大概、日本だとプロフェッショナルの人たちを指すと思います。でも、アメリカでは少しでも音楽に従事していれば
I’m a musician
と言います。「音楽をやる人」という意味なので、プロ・アマ問いません。ちょっとかじったくらいの感じでも、子どもでも、自分の心持ちがそうなら、”I’m a musician.”と言います。このウェブサイトでも同様の意味で使っています。
あなたがmusicianなら、様々な音楽をよく聴いて、自分でも実践する。これがとても大切です。
Step 1: 色んな媒体で様々な音楽に触れる
音楽を聴く方法は色々あります。ライブ、コンサートなどを生で聴けるなら、最高ですよね。CDやダウンロードデータなど録音されたものでも良いし、LPも素敵です。
ですが、特に私がオススメするのはストリーミングです。日本では、YouTube, Apple, Amazon, Spotifyなどがポピュラーだと思いますが、他にも多くのプラットフォームがあります。
ストリーミングなら、スマホ1台で、いつでもどこでも音楽が聴けます。手軽で場所を選ばない、個人では持てない膨大な音楽データがある、無料のものが多い、サブスク(定期購入)しても安い…メリットばかりです。ぜひ活用して、色んな音楽に触れて楽しんでください。
下記にアメリカで使われている主なストリーミング・プラットフォームを挙げてみました。無料のもの、広告が入ることで無料で使えるもの、定額料金を支払って使うもの、色々あります(日本からアクセスすると日本用の配信になったり、配信していないものもあるかもしれませんが)。
Amazon Music, Apple Music, CDBaby, Deezer, DistroKid, Ditto Music, 8 Tracks, Google Play, Grooveshark, iHeartRadio, Landr, Last.FM, Mixclouds, MySpace, Pandora, Qobuz, RDIO, SHAZAM, SiriusXM, Slacker Radio, SongCast, SoundCloud, Spinnup, Spotify, The Sixty One, TIDAL, TuneCore, YouTube, Xbox Music (アルファベット順)
ストリーミングの良いところは、受け手として音楽を聴くだけでなく、供給側としてあなたの音楽を配信できること。あなたの音楽を、大してお金をかけずに簡単に配信できます。
そして知っておいて頂きたいのは、既に2016年時点で、世界の50%以上の人がストリーミングで音楽を聴いていることです。つまり、世界の50%以上の人があなたの潜在的なリスナーやファンになります。
アメリカは音楽市場の世界シェアNo1ですが、音楽は皆ストリーミングで聴いています。日本は世界シェアNo2でありながら、いまだにCDの売り上げが一番高い、かなり特異な国ですが、パンデミックによって、日本でも世界でもストリーミングプラットフォームの重要性が高まるのは必至でしょう。
最近は日本でもストリーミング発で売れるミュージシャンが出てくるようになりました。もう、どこかの事務所やレコード会社と契約してCDなどモノを売る時代ではないってことです。
Step 2: パフォーマンスしてみる
音楽を聴いていたら、自然と口ずさんだり、真似たりしていると思います。
歌でも楽器でも、とにかく聞こえてくる音を真似して出してみてください。楽譜を使わず、繰り返しよく聴いて真似してみるんです。
そして、何も見ずに1曲通してできるようにします。できたら、ご家族でも、お友達でも、身近な人に披露してください。軽いノリで構いません。
1曲できたら、同じことを繰り返して曲数を増やしていきます。できる曲が増えてきたら、ご家族やお友達だけでなく、ストリート、Open Mic、カフェ、レストラン、ライブ、コンサートなど、全く知らない人たちの前でもやってみてください。YouTube、インスタ、Facebook、Twitterなどに投稿するのも良いですね。
たまに練習だけして満足してしまう人がいますが、練習だけではダメです。人前でパフォーマンスして初めて得られるものがあるので、必ずパフォーマンスの経験値を上げていってください。
耳コピ→練習→人前でのパフォーマンスは独学でもできます。この訓練は、プロミュージシャンを目指したり、大学で音楽を専攻する場合に非常に役に立つので、ぜひ頑張ってトライしてみてください。
楽譜の読み方を覚えるのは、徐々に取り入れれば良いです。
クラシックをやっている方だと楽譜ありきになってしまうと思いますが、人前でパフォーマンスするときは必ず暗譜してやってください。そして1フレーズでも構わないので、耳コピ→練習→人前でのパフォーマンスをやってみてくださいね。
でも、真似するって言っても、真似したところでどこまでできるの?
そんな疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そんな方は、こちらの動画を見てみてください。Rich Brianというインドネシアのラッパーです。ダサい感じが面白いですが、ラップは本格的。ラップも英語もYouTubeを通して学んだそうです。アメリカ人が聞くと、彼の英語はネイティブだと思うそうです。しかも、アメリカのラップをそのまま持ってくるのではなく、自分の個性を出してユニークなラップに仕上げています。本気を出せば、ここまでできるという良い例です。
また、一歩先に進みたい人は、あなたの好きな曲を分析してみてください。ジャンルは何か、曲の中でどんな楽器が使われているか、それぞれの楽器がどんな役割を果たしているか、どんなリズムか、どんなメロディラインか、どんなベースラインか、ハーモニー(コード)はどうか、コード進行はどうか、曲はどう構成されているか等々、あなたなりの考えを書き出していきます。歌詞があるなら歌詞がどうつくられているか見るのも勉強になります。
驚きの発見が沢山あるはずです。こうした訓練は、音楽理論、作曲、ソングライティングに役立ちますよ。
Step 3: アメリカの先生に習う
何かを習得しようとするとき、どの先生につくかはとても大切です。
先生には、教えられるだけの確かなスキルと情熱が必要です。良い先生は、あなたの音楽性やテクニックを上げてくれるだけでなく、モチベーションも上げてくれます。
日本にも素晴らしい先生方が沢山います。でも、アメリカの先生はもっと音楽を楽しみ、味わい、人生を豊かにしていくことを第一に、素晴らしいテクニックを論理的に教えてくれると思います。踏み込んで音楽をやりたいと思ったとき、海外の先生方に習うと「目から鱗」ということが沢山あるんです。
例えば、日本にいても来日したミュージシャンのワークショップに参加できますし、オンラインで海外の先生から直接プライベートレッスンを受けることができます(※時差あり)。実は、アメリカの大学の先生は、特にAdjunct(講師)の方だと、学校とは別に個人レッスンを持っている方が多いです。
日本の感覚だと正規採用されている先生や教授の方が凄いと思われるかもしれませんが、アメリカでは全く当てはまりません。音楽は実力と実績の世界なので肩書きに囚われない方が良いです。Adjunctの方で、幾つもの大学で教えていたり、本業の方が忙しいからフルタイムで大学の先生はしたくないという方も沢山います。
いつかアメリカへ音楽留学を考えているなら、アメリカのミュージシャンや大学の先生に習うと、情報も入りやすくなるし、向こうでのネットワークもつくりやすくなるし、いずれ大学へ願書を出すときに推薦状を書いてもらうことが期待できますよ!
Step 4: 短期の音楽留学をしてみる
もし、Step3までやって物足りないと思ったら、実際にアメリカに行って音楽を習ったり、音楽活動をしてみましょう。
オンラインでアメリカの先生に習っているなら、直接会いに行ってレッスンを受けても良いし、誰か他の先生を紹介してもらうこともできます。ツテがないなら、音楽専門の留学エージェントに先生を紹介してもらうこともできます。
他にも、アメリカで開かれるワークショップに参加したり、短期でミュージックスクールへ行ったり、大学のサマースクールに参加したり、それこそ現地でパフォーマンスして来たら良いと思います。
Step 5: アメリカの大学のオンラインコースを取ってみる
さらにもっと本格的に音楽を勉強したいなら、アメリカの大学の音楽の授業をオンラインで取ってみるのもお勧めです。例えば、Berklee College of Musicは、何年も前からオンラインコースに力を入れていて、現在250以上のコースを受けることができます。オンライン授業だけのCertificate/ Bachelor’s/ Master’s Degree programもあります。
音楽は実際に生で体験するのが一番だし、パフォーマンス希望だと全てオンラインというのは中々難しいけれど、講義で学べる部分はオンラインを使っても良いのではないかと思います。しかも、オンラインだと学費がキャンパスで学ぶのに比べて30%以下と安い。
様々な理由で現地へ留学することができない方は、オンラインでの留学もありだと思います。あるいは、いつか正規留学するための助走として使っても良いと思います。単位を取れば、実際に現地へ大学留学したときに移行できる可能性があるし、最初から行きたい大学のオンライン授業なら、恐らく取った単位は丸々認めてくれるはずです。
Step 6: アメリカの大学で音楽を勉強する
もう情熱を持て余し、日本国内では飽き足りず、どうしてもアメリカに行って音楽を本格的に勉強したい!ということであれば、College/ Universityへ留学してしまいましょう。
正規留学(通常4年間のプログラム)の他にも、交換留学、Diploma・Associate Degree取得で行くことも出来ます。
音楽は体感し、自分でやってみたり、つくってみたりすることが極めて重要なので、現地へ行くことで得られるものは非常に大きいです。
やはり国が違えば、音楽への接し方だったり、表現の仕方だったり、全然違うと感じると思います。才能ある同級生たちからも良い刺激がもらえます。あなたの想像を遥かに超える経験が目白押しです。
ちなみに、アメリカの大学院へは、将来音楽の先生になりたい人、よりアカデミックに勉強したい人が行っています。また、留学生がアメリカで就職したり就労ビザを取るには、大学院卒の方が絶対有利なので院へ行く人もいます(現状ではアメリカでの就労やビザ取得は厳しく、政府の対応が非常に流動的なので、正直なところ何とも言えません)。
Step 7: 番外編
番外編として、日本人の方でよく見られ音楽留学のカタチをご紹介しておきます。
やはり大学への正規留学は色々と負担が大きいので、語学留学など何かしらで学生ビザを取得して、学校へ行きながら別に自分で音楽活動をするというパターンです。
この場合は、自分で音楽の先生を探して習ったり、とにかく人前でパフォーマンスをしたり、教会に通って音楽のメンバーになったり、自分で道を切り拓いていく必要があります。
素晴らしい経験になると思いますが、あなたの音楽人生の運を天に任せるようになってしまうかな、と個人的には思います。また、アメリカの音楽業界はとても層が厚く、ポッと出てきた英語ができない外国人が参入できるような場所ではありません。実際は大学で専門教育を受けたプロフェッショナル達が支えて成り立っていて、例えば、教会での演奏も、音大でメンバーの募集がかかったり、大学の先生達がボランティアで演奏したりしています。
やはり色々と総じて考えると、本気で音楽をやりたい、音楽で何者かになりたい人は、大学(コミカレ含む)でDiplomaなど短期でも良いから、少しでも専門的に勉強した方が得るものが大きいと思います。