6月25日、トランプ大統領はFox News(アメリカの保守系TV局)の番組に出演。シカゴやバルティモア、デトロイト、オークランドにおける殺人や暴力犯罪の多さについて、「地獄に住んでるみたいだ」と揶揄しました。実はこれらの街の市長は、全員が民主党であるため、トランプ大統領は11月の大統領選再選を念頭にした発言とも受け取れます。
中でも標的になったのが、現在私が住んでいるシカゴです。トランプ大統領は「シカゴはアフガニスタンより酷い」と批判。実は昨年も同じような発言をしていました。そんなシカゴは全米No.3の大都市であり、オバマ前大統領一家が住んでいた街でもあります。
犯罪はシカゴ全体で見られますが、主には南側で起こっていて、毎週のように誰かが撃たれて殺された怪我をしたというニュースが流れます。殺人、傷害の原因が、銃によるものというのがアメリカらしいです。シカゴは全米第3の都市として繁栄し、経済的にも文化的にも魅力的な街ですが、ギャングが多く治安が悪いというダークサイドは誰もが認めるところでしょう。
2020年5月の最終週の週末には、5月31日だけで18件以上の殺人が発生しました。これは過去60年で最悪の記録です。この日の911のEmergency call centre が受けた電話は65,000件以上に及びます。さらに6月19日金曜日から22日月曜日の早朝の週末にかけては、何と106名が撃たれ、少なくとも14名が死亡。この死亡者のうち12名は18歳以下で、さらに内5名の犠牲者は3歳児を含む小さな子どもです。奇しくも6月21日の日曜日は父の日、何ともやるせない気持ちになります。この直後に TV番組でトランプ大統領の発言があったので、彼の発言は大袈裟ではあるものの、あながち遠からず、と感じます。
シカゴ市長は、特に新型コロナウィルスによるパンデミックが起こってから、連邦政府がこうした犯罪に対して通常通り機能していない、また、シカゴがあるクック群はウィルスの拡大を防ぐため刑務所内の囚人を街に戻している。こうしたことから市警察は治安を守るのに困難な状況にあると言っています。
さらには5月25日、ミネソタ州ミネアポリスでBlack manのGeorge Floyed氏が警察によって不慮の死を迎えたことに端を発し、継続的に全米各地で人種差別に対する抗議デモや暴動が起こっています。もちろんシカゴでも、だいぶ落ち着いては来ましたが、今も抗議活動は続いています。一時は軍の姿も見ましたが、警察も萎縮している部分が見受けられ、これも治安の悪化に影響を与えていると思います。
シカゴの殺人件数は、1968年から2003年にかけては年間600件〜1,000件と高かったのですが、2004年〜2015年にかけては年間400〜500件くらいで推移しています。2016年にはまた急激に増加していますが、以後は減少しているようです。
年 | 殺人件数 |
---|---|
2019 | 490 |
2018 | 564 |
2017 | 650 |
2016 | 762 |
トランプ大統領は番組の中で、治安維持のためにStop-and-frisk tactics、銃を所持していそうな怪しい人を止めて身体チェックをすることを提案しています。これはNYでRudy Giuliani氏が実績を上げた方法で、彼は1980年代に連邦検察局の立場から、1990年代には市長として、NYの犯罪の減少に多大な貢献をしました。ちなみに現在、Rudy Giuliani氏はトランプ大統領の個人弁護士です。
確かに昔のNYは危険な街で、電車には乗れない、皆いつでも逃げられるようにスニーカーを履いて通勤、通学している様子をTVなどで見ていました。2012年にNYを訪れたことがありますが、かつて NYで最も危険だったハーレムに銀行ができたりホテルが建ったり、更に学園都市化しているのを見てとても驚きました。
シカゴ市は、2020年は殺人件数を300件くらいに留めたいと言っていますが、果たしてどうなることでしょうか。早く、皆が安全に暮らせる街になって欲しいものです。
参考:
・Fox News