7月6日、米移民税関捜査局(ICE)は、アメリカで学位の取得を目指している外国人留学生について、在籍する大学がオンラインのみの授業に切り替えた場合、アメリカから出国しなければならなくなる、もしくは強制送還の恐れがあると発表しました。
7月14日、トランプ政権はこの新ガイドラインを撤回しました。>>>詳しくはこちら。
この措置は、米国の大学で学ぶ留学生のほか、研修プログラムや職業訓練の参加者など、何千という学生に影響が及ぶ可能性があります。
米国の大学は、新型コロナウィルス対策のため、オンライン授業への切り替えを決定しつつあります。例えば、ハーバード大学は、キャンパス内に居住する学生も含め、全ての授業をオンラインに切り替える予定で、その場合、留学生はアメリカからの出国を迫られることになります。
「不確定要素が沢山ある。すごくストレス。もしメキシコに帰国しなくちゃならなくなったら、私は帰れるけど、多くの留学生はできないと思う」とハーバード大学・ケネディースクールの大学院生、Valeria Mendiola (26)は話します。
6日の発表の中で、米移民税関捜査局(ICE)は、学生ビザを保有する留学生について、「オンラインで全講座を受講して米国に留まることはできない。」また、「米国務省は、今秋学期の授業が完全にオンラインになる学校やプログラムに入学する学生にはビザを発給しない。米税関・国境警備局(CBP)も、そうした学生の米国への入国を許可しない」としました。
ICEは、既に米国内の大学などに在籍している留学生については、例えば対面授業を行う学校に転校するといった他の手段を考えるよう提案しています。オンライン授業と対面授業を組み合わせたハイブリッド授業を採用している大学は、今回の措置の例外となるからです。
米教育協議会(全米の大学約1800校から成る)の副会長Brad Farnsworth氏は、この発表は彼を含めて多くの人を驚かせたとし、「これで一層、混乱や疑念が生じるだろう」と懸念を示しました。また、Brad Farnsworth氏は、「私たちが望んでいたのは、各大学が模索するそれぞれの可能性を認可してもらうことだった」とし、「新しいガイダンスについての懸念の1つは、これから秋に衛生状況が悪化して、対面式授業の大学が安全のために全ての授業をオンラインに移行したらどうなるかということです」と指摘しました。
学生ビザの要件は常に厳しく、オンラインのみの授業を取るために米国に来ることは禁止されています。
「これらの大学は、コロナのことがなければ通常は対面式授業をしている合法的な大学です。」と超党派政策センターの移民・国境政策のディレクターであるTheresa Cardinal Brown氏は言います。「最も大きな問題は、今も渡航制限を行っている国があって、帰国できない学生達がいることです。彼らにどうしろと?学生には解決できない難題です。」
ハーバード大学の学長Larry Bacow氏は、「この発表が留学生に複雑な問題をもたらすのではないかと懸念しています。特にオンライン授業を受けている、帰国や転校する以外に方法がない学生達に大きな影響を与えます。世界的なパンデミックの中で、健康・安全と学問との両立を、ハーバードを含む多くの大学が学生に代わって講じてきた慎重なアプローチを損なうものです。」と話しました。「私たちは、方針を示すため、全米の他大学と連携していきます」と語りました。
ワシントンDCのシンクタンク、Migration Policy Instituteは、この発表によって、全米8,700以上の大学に在籍・登録した約120万人の留学生に影響が出ると推定しています(2018年3月時点の統計)。
前述のFarnsworth氏によると、「対面式授業を行う大学へ転校すればよいと言っても、コロナ禍では難しいでしょう。いくつかの大学は学生を秋に呼び戻す計画を発表していますが、学期を短くしているし、対面授業をほとんど中止しています」とのことです。
参考:
・CNNのニュース