アメリカ留学をお考えの方へ。
アメリカの教育制度ってどうなってるの?
アメリカへ高校/大学留学するには、まず教育システムの違いを理解する必要があります。アメリカ人はアメリカの教育制度が当たり前だと思っています。日本との違いが分からない人の方が圧倒的に多いし、いちいち違いを留学生に教えてくれません。留学希望の方は予め、知っておいた方が良い情報です。
知らないと後で苦労するよ!
本記事では、入門編として、日米の学校教育の違いを説明します。
1. 日米の学校教育の違い
① アメリカは高校までが義務教育
日本だと、全国どこでも小学校6年・中学校3年・高校3年です。小中は義務教育、高校は義務教育ではありません。
対して、アメリカには全国的な学校制度はありません。州ごとに違います。通常、K-1〜K-12(6才〜16才、州によっては18才まで)が義務教育にあたり、無償で学校教育が提供されます。地域によって異なりますが、小学校5年・中学校3年・高校4年、または、小学校6年・中学校2年・高校4年が主流のようです。
アメリカでは学年(Grade)をKindergarten-◯◯と表すよ。
1年生なら、通常は略して”K-1”や”First grade”って呼ぶんだ
高校では、”K-○○”って呼び方もあるけど、
1年生を Freshman、2年生をSophomore、3年生をJunior、4年生をSeniorと呼ぶよ。
大学もこれは同じ!
州によって、州政府が教科書選定やカリキュラムを決定するところもあれば、地域の学校区に決定を委ねているところもあります。しかし、公立、私立ともに連邦政府のプログラムに参加し補助を受けていて、連邦政府教育省がプログラムの監督をしています。
日米の進級、進学の違いを一覧表にしてみました。どちらも代表的なパターンを掲載しています。
日本 | 学年 | 年齢 | アメリカ | 学年 | |
---|---|---|---|---|---|
保育園 | 0 | Day Care | |||
保育園 | 1 | Day Care | |||
保育園 | 2 | Day Care | |||
保育園 | 3 | Preschool | |||
保育園/幼稚園 | 4 | Preschool Kindergarten | |||
保育園/幼稚園 | 5 | Kindergarten | |||
小学校 | 1年生 | 6 | Elementary School | K-1 | Primary Education |
小学校 | 2年生 | 7 | Elementary School | K-2 | Primary Education |
小学校 | 3年生 | 8 | Elementary School | K-3 | Primary Education |
小学校 | 4年生 | 9 | Elementary School | K-4 | Primary Education |
小学校 | 5年生 | 10 | Elementary School | K-5 | Primary Education |
小学校 | 6年生 | 11 | Middle School | K-6 | Primary Education |
中学校 | 1年生 | 12 | Middle School | K-7 | Primary Education |
中学校 | 2年生 | 13 | Middle School | K-8 | Primary Education |
中学校 | 3年生 | 14 | High School | K-9 | Secondary Education |
高校 | 1年生 | 15 | High School | K-10 | Secondary Education |
高校 | 2年生 | 16 | High School | K-11 | Secondary Education |
高校 | 3年生 | 17 | High School | K-12 | Secondary Education |
大学/短大 | 1年生 | 18 | College / University Undergraduate | Higher Education | |
大学/短大 | 2年生 | 19 | College / University Undergraduate | Higher Education | |
大学 | 3年生 | 20 | College / University Undergraduate | Higher Education | |
大学 | 4年生 | 21 | College / University Undergraduate | Higher Education | |
大学院修士課程 | 22 | College / University Master program | Higher Education | ||
大学院修士課程 | 23 | College / University Master program | Higher Education | ||
大学院博士課程 | 24 | College / University Doctoral Program | Higher Education | ||
大学院博士課程 | 25 | College / University Doctoral Program | Higher Education | ||
大学院博士課程 | 26 | College / University Doctoral Program | Higher Education | ||
大学院博士課程 | 27 | College / University Doctoral Program | Higher Education | ||
大学院博士課程 | 28 | College / University Doctoral Program | Higher Education |
② 公立と私立はあるが、国立学校はない
アメリカには全国的な学校制度がありませんし、国立学校もありません(国立学校は軍の士官学校のみ)。公立と私立では、学費の面で圧倒的に公立に行く人が多いです。
公立より私立の方が教育の質が良いという話もありますが、公立の中にも素晴らしい学校はあり、質は学校によります。
私立の中には全寮制の学校(Boarding School)があり、24時間体制で、学習面だけでなく課外活動や集団生活を通じて、子どもの成長を見守ってくれるところがあります。
③ 新年度は9月から。夏休みは3ヶ月
アメリカでは新年度(Academic Year)は9月から始まり、5月に終わる学校が多いです。開始時期と終了時期は学校によって多少前後します。夏休みは長くて約3ヶ月あります。この間、子どもたちは家族とゆっくり過ごすのはもちろんのこと、サマースクールやボランティアに参加するなど自主的に活動しています。
④ ホームスクーリングが普及
学校に通わず、家で教育をするスタイルも普及しています。ホームスクーリングでは、保護者が勉強を見たり、家庭教師に任せたり、一部は学校で教育を行ったりしています。
⑤ 障がい者教育が充実
アメリカにはIDEA(個別障がい者教育法)があり、障がいがある子どもたちには、その子に合わせた教育支援を無料で行うよう法律で定められています。日本では見過ごされがちな、学習障がいや発達障がいを持った子ども達も、個々に教育計画が作成され、個別の特別教育プログラムが無償提供されます。
⑥ ESLが充実
さすが移民の国アメリカでは、英語を第2言語とする生徒への英語教育(English as a Second Language)も充実しています。小学校〜大学までESLプログラムがあり、英語力が足りない人はESLのみで始めたり、ESLと正規授業を組み合わせたりできます。
⑦ アメリカの高校は単位制、3学期制が一般的
アメリカの高校は単位制で、クラスも授業ごとに移動します。生徒によってカリキュラムが異なるため、どの高校にもAcademic Advisorがいてクラス登録をサポートしてくれます。選択科目は、工学、プログラミングから音楽、アートまで幅広いです。専門分野に特化した学校もあります。
3学期制が一般的ですが、2学期制や数週間の短期間を1学期とする6学期制・8学期制を採用する学校もあります。ただ、いずれも新年度は9月からです。
⑧ 飛び級制度あり
アメリカでは、中・高・大で年齢制限なく入学できます。その子の学力に応じたところで教育が受けられるようになっているので、「早期入学」や「飛び級」が可能です。高校へ行きながら並行して大学へ通うこともアリ。逆に学力に遅れがあると、高校では単位が取れず留年となります。
⑨ 注目のSTEM教育
STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の領域を指します。産業競争力を上げるため、オバマ政権下でSTEM教育は国家戦略として位置づけられました。
また、テクノロジーを使って個々に合った学習ができるよう、皆がそれを享受できるよう、オンライン学習やハイブリッド(対面とオンラインを組み合わせたもの)などが以前より教育現場に取り入れられています。
これはパンデミックで教育をオンライン化しなければならない今から振り返ると、ある意味準備ができていた訳で、ラッキーだったなと思います。
⑩ 誰でも平等に教育を受けられる
アメリカは移民国家で、様々な人種、民族、宗教、言語などを持った人たちがいます。一括りにはできない、非常に多様性のある国です。そして、どんな立場の人でも教育が受けられます。
アメリカでは、子どもたちは、性別、人種、宗教、学習障がい、身体障がい、英語力、国籍、移民資格にかかわらず、教育を受けることができます。しかも高校まで無償で。
これがアメリカの懐の深さですね。
最後に、よく知っておかなければならないのは、アメリカは褒める文化であること。相手を褒めて、褒めて、褒めまくります。特に小学校などでは登校しただけで「うわぁ、来てくれたのね。ありがとう!すごいわぁ!(ハート)」みたいな感じなので、子供たちはとても気持ち良く、楽しく学校へ行けます。そしてのびのび勉強させて、その子の良いところを伸ばす教育方針です。興味を持ったものを自由に突き詰めていく余裕があります。だから飛び抜けた天才的な人が出てくるのかな、と思います。
2. アメリカの子ども達の学力
それでは、実際アメリカの子どもたちの学力はどうなのよ?と疑問に思うかもしれません。アメリカの学校教育は、様々な立場の子ども達に均等に教育の機会を与え、伸び伸び勉強させるという点が素晴らしい。しかし間違いなく日本の子どもに比べてかなり学力が劣ります。
色んな人がいるので一括りにできませんが、アメリカの高卒の人たち(大学をドロップアウトした人含め)の学力は日本の中学生程度に感じます。
例えば、国語(英語)です。日本の識字率は100%と言って良いでしょう。しかし、話せても書けないアメリカ人は結構います。例えば、「砂糖・さとう・サトウ」と書けない日本の大人はまず居ないと思いますが、私は20代後半のアメリカ人に「Sugarってどう書くの?スペル教えて」と言われたことがあります。また、やはり大学のアメリカ人同級生に授業中、「Peer(s)ってどういう意味?どう書くの?」と聞かれたこともあります。Peer(s)は仲間とか友達のような意味ですが、私は中学生のときに学校で習った記憶があり、「ネイティブがこんな基本的な単語を知らないの??」と内心とても驚きました。ブッシュ元大統領が”Potato”のスペルを間違ったという報道も昔見たことがあります。今だとスマホやパソコンの普及で字を書かない人が増えたということもありますが、26文字のアルファベットしか使わないのに何故???と驚きを隠せません。読解力以前の問題。。。
数学は、特にアジアの国々に比べ一番遅れている科目です。ある日、大学のビジネス専攻の子が隣で何やらノートとにらめっこしながら唸ってて、おもむろに「この数式どう解けばいい?中間試験で出るんだ」って聞いてきました。見ると超簡単な因数分解の数式でした。やはり内心すごく驚いて「マジか。私が中1でやった問題だぞ。そんな昔のこと覚えてないわ。」って思いました。Mathが苦手なアメリカ人は本当に多いです。簡単な暗算もできない人がいっぱいいる。ITを大学院で勉強していた中国人ルームメイトは、「アメリカ人は数学が苦手で、アジア人ができるの知っているから重宝される。」と言っていました。そりゃいくらSTEMって言ったって、こんな状況ならIT業界をインド人や中国人に牛耳られるよなぁと思います。
地理、歴史、政治経済も??と思うことが多いです。外国の国名を知らなかったり、地図を見てもどの国がどこにあるか分からなかったり。ましてや他国の歴史など推して知るべしです。アメリカの歴史はどうか分かりませんが、せいぜい400年くらいですからね。。。
このように、のびのび勉強させることのマイナス面としては、国民全体の学力が下がってしまうことが挙げられます。いくら個人主義社会とはいえ、一定の社会性は必要ですが、身に付いていない人も多い。集中力、注意力も欠けている。学校によって、また、自発的に学ぼうとする人とそうでない人では、学力、運動能力、その他諸々、かなり大きく差が開いてしまいます。これは国として大きな損失だと思います。
余談ですが、アメリカの学校にはプールがありません。そのためアメリカ人は泳げない人が多い。学校には色々なクラブ活動がありますが、スイミングクラブはない。泳ぎたければ自分で学外でどこか探さないといけません。このように学校では足りないことも多いので、習い事がかなり盛んに行われています。結局、経済的に余裕のある家庭はそういうことができますが、貧困家庭ではそんな余裕などない。ブラック、ヒスパニックの人たちが貧困から抜けられない理由の一つです。
アメリカ人看護師のルームメイトは「大学くらい出てなきゃnothingだ。」と言っていましたが、残念ながらその通りです。最終学歴が高卒の人はアメリカ社会では職種も収入もかなり限られてしまい、レストランのサーバーや、肉体労働など敬遠されがちで安い賃金で働かざるを得なくなってしまいます。アメリカの大学は学費が高いので、結局お金のない人は行けない。貧困のループです。悲しいかな、学歴格差はアメリカの格差社会を助長する一因になっています。
終わりに。
この記事で多少なりともアメリカの学校教育の特徴はお分かりいただけたでしょうか。アメリカと日本とどちらが良い悪いというのはありません。教育システムが全く違うので、そこをよく理解し、短所も把握した上で留学を考えていただければと思います。