アメリカへの大学留学をお考えの方へ。
アメリカの大学へ留学したいと思ったら、日本の大学との違いや特徴を知らないと、ですね。これはとても大切なんです。知らずに留学、あり得ません!知らないまま留学しても、アメリカ人はアメリカのやり方が当たり前なので、日本との違いが分からないしイチイチ教えてくれません。壁にぶつかりまくって学ぶハメに。。。
でもネットで探しても、情報があるようで中々見つからないよ?
そう、そう。私も同じ経験ある。
だけど大丈夫、安心して!
このサイトを見れば体系的に分かるように、事前に絶対知っておくべき情報を「アメリカ留学Tips」シリーズでお伝えしていきます。
本記事では、まず日米の大学の歴史(大学ができた経緯と目的)を説明します。そこからアメリカの大学の特徴がより深く理解できると思います。
1. 日米の大学の歴史
① 日本の大学の歴史
日本最古の大学は東京大学です。江戸時代に徳川幕府が設置した昌平坂学問所と医学所、開成所をルーツとして、1877年(明治10年)に設立されました。
富国強兵・近代化を推し進める中で、1886年に帝国大学令が公布され、官僚養成機関として国家主導で大学が創られていきました。
帝国大学は、当時世界の学術の中心であったドイツ、そしてフランスの大学の強い影響を受けながらも、ヨーロッパの伝統的な大学と異なり、工学部・農学部を設置した点、また学術分野で分断することなく共通の高等普通教育を施した点が革新的と言われています。
少人数制を維持して教員と学生の交流を重視した点も優れていて、当時の帝国大学の教育水準はアメリカの大学院修士課程レベルだったそうです。
他方で、高等教育拡充を目的とした1919年の大学令により、従来の帝国大学に加えて私立大学、公立大学、単科大学も大学として認められるようになりました。私立大学のルーツは、慶応大学などの私塾、法政大学や明治大学などの法律学校、国学院大学などの宗教学校のように大別できます。私立大学は、それぞれ創立されたときの特色を活かしつつ、現在に至ります。
また国立大学については、2003年の国立大学法人法に基づき、2004年に99の国立大学が89の法人に再編・設立されました。これにより国が財政措置を行いつつ、実際の運営は各国立大学に任されるようになりました。
② アメリカの大学の歴史
アメリカの大学の特筆すべき点は、国が関与していないことです。日本と真逆。
もちろん従うべき法律や規制などはありますが、基本的に大学は私立機関もしくは州や市の機関として管理されています。
アメリカに国立大学は存在せず(国立大学は軍人のためのものです)、私立大学と公立大学(州立大学、市立大学)があります。
元々、アメリカの大学は、ヨーロッパの人々がアメリカ東海岸に移民した際、イギリスのUniveristy of Oxford やUniversity of Cambridge などをモデルにして、富裕層の子ども達のために聖職者や植民地のリーダーを育成する目的で、私財を出しあって学校をつくったのがはじまりです。
従って、アメリカで一番最初にできたのは私立大学になります。最も古い大学は1636年創立のHarvard University と言われています。その他、Yale University、 Princeton University、Columbia Universityなど、Ivy leagueとして知られる大学は同時代に設立されています。もっとも、どこが一番古いかは議論の余地があるようです。
したがって、古い大学というのはアメリカの東側に集中しています。アメリカの大学は東から西へ、開拓されるのにあわせて広がっていきました。
現在でも、私立大学は行政が関与せず、個々の大学にあるLocal Board of Trusteesが運営しています。
そして大学教育の当初の目的は聖職者・リーダー育成でしたが、アメリカ独立戦争(1775-1783)を機に様子が変わり、医学や法学を包括するようになりました。
産業革命を経て、19世紀になると大学教育が根本的に変わります。農業や工学など実用的な分野が加わり、産業界に必要な人材を育成するため、各州主導で州立大学を設立し始めたのです。
20世紀になると州立大学は大規模かつ複雑に発展し、今日では、いくつもの学問的機関やキャンパスを持つ巨大な組織となっています。また運営上はHigher Education Boardと呼ばれる州レベルでの調整を受けるとともに、大学内の各学問的機関のLocal Board of Trusteesによって管理運営されています。
2. アメリカの大学の特徴
① アメリカの大学の特徴
アメリカの大学は、日本の大学と違って、非常に柔軟性、多様性があるのが魅力です。その人の興味やレベルに応じて勉強できます。
日本の大学制度、大学受験にも、もちろん良い点があります。でも短所といえば、実に硬直的なところ。パッと思い付くだけでも、こんな感じですよね?
- 小さい頃から暗記重視の受験勉強
- 受験のチャンスは年に1回だけ
- 文系、理系に分けられてしまう
- 1つしか専攻を持てない
- 他学部、他大学で並行して勉強できない
- 簡単に専攻を変えられない
こうしたストレス、アメリカの大学では皆無です。どんな分野でも学生の勉強したいという欲求に対して、きちんとサポートしてくれる体制が整っています。
アメリカの大学の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 一般教養を中心とするカレッジ教育を重視(人間形成の重視)
- 学士号取得者を対象に、世界に先駆けて大学院制度を創設
- 複数の教授や複数の准教授、助教授等で構成されるデパートメント制度を採用
- 産業界の発展に寄与する大学づくり
- 高等教育機会均等の原則を政策的課題としたため、多様な大学を創設
- 学生の多様性を尊重し、学生の能力・関心に応じた多様な教育を提供
以下、説明していきます。
(1) 一般教養と中心とするカレッジ教育を重視(人間形成の重視)
アメリカの大学では、一般教養が重視されます。4年制大学でも学部ではそれほど専門的なことはしません。どこの大学でも、4年のうち2年間は一般教養の単位を取ることになり、文系・理系関係なく様々な分野を学びます。
医学、薬学、法学などについては、学部課程に専攻自体がありません。これらは専門的な分野で大学院で学ぶものとされているからです。専門分野を勉強する前に、一般教養をしっかり身につけて!というのがアメリカ式で、世界的にもユニークです。なので医学を勉強したくても、学部課程では数学、政治学、心理学、ビジネスなど全く異なる分野を専攻して、大学院で初めて医学を専攻するということになります。
結果、多種多様な人材が生まれ、様々な考えを持つ人達が意見を出し合ってベストな答えを見つけられるようになる。これがアメリカの大学、社会の強みの一因になっていると思います。
逆に、アメリカの高卒=日本の中卒くらいの学力なので、専門教育を施すにはワンクッション入れないと厳しいという実情もあるかと思います。
(2) 学士号取得者を対象に、世界に先駆けて大学院制度を創設
1876年、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が世界で初めて「大学院」を設置ました。この大学、最近では新型コロナの統計を毎回出しててお馴染みになりましたね。
(3) 複数の教授や複数の准教授、助教授等で構成されるデパートメント制度を採用
アメリカの大学では学問分野ごとにDepartmentがあります。日本でいう学部や学科に当たりますが、どのDepartmentでも所属の先生が学部1年生から院生まで教えます。
(4) 産業界の発展に寄与する大学づくり
いくつかの歴史的な要因によって、アメリカの大学と産業界は密接に繋がっています。
アメリカでは連邦政府の予算で大学が研究し、得た特許を産業界に移転することが可能です。また、大学は産業界から資金提供を求めるとともに、有益な技術開発を行って社会・産業界に還元するという循環ともいうべき流れがあります。
大学と産業界の連携は、学生にとっても恩恵があります。大学に通いながら産業界に目を向け、業界人とネットワークをつくることができる。これは雇用のチャンスにつながります。
企業側としては、大学の新しい研究成果・技術へのアクセスが容易になるとともに、才能ある研究者などをリクルートすることができます。
非常に有機的で、連邦政府、大学、学生、産業界、いずれの立場もWin・Winの関係です。またこの連携は国全体に相乗効果をもたらし、強いアメリカを生み出しているのだと思います。
(5) 高等教育機会均等の原則を政策的課題としたため、多様な大学を創設
例えば、リベラルアーツ・カレッジ、コミュニティ・カレッジ、研究型大学などです。こうした大学は日本には無いので、別記事で詳しく説明します。
(6) 学生の多様性を尊重し、学生の能力・関心に応じた多様な教育を提供
例えば、次のようなものが挙げられます。
- 大学教育を受ける準備が不足した学生には補充教育を実施
- 専門教育においてメジャー、マイナー(主専攻、副専攻制度)を採用
- 能力の高い学生には早期に大学院レベルの高度な教育の機会を提供
- ダブルメジャー(複数専攻)やジョイントメジャー(複合専攻)を推奨
- 大学院進学は他大学の大学院へ進学(専攻の変更も可能)
こうしたアメリカの大学の多様性、柔軟性のあるシステムは素晴らしいです。しかし他方で、大変複雑なために、特に外国人には理解が難しいと思います。こちらもトピックが大きいので別記事で詳しく説明します。
② アメリカの大学はとにかく規模がデカイ!
大学には学部、学科があって、いくつかのキャンパスを持っているところもあって。。。日本ではそうですね。そして英語の授業では、もしかしたらUniversity=総合大学、College=単科大学、School=学校と習った方も多いのではないでしょうか。
しかし日本のそのイメージをアメリカの大学にそのまま当てはめることはできませんし、そのUniversity、College、Schoolの理解は違います。
実際には、Universityと呼ぶかCollegeと呼ぶかは固有名称的な問題です。Universityでは単科大学はないかもしれませんが、Collegeでいくつもの専門領域を持っているところはいっぱいあり単科大学とは言えません。また、UniversityやCollegeを大雑把にまとめてSchoolと言うこともあるし、UniversityやCollege内にある専門分野の学校をSchoolと呼ぶこともあります。
少し分かりにくいのは、大きな大学だと専門分野ごとに学校を内包していて、◯◯Universityの中にいくつものCollegeやSchoolがあったり、またXXCollegeの中にいくつものSchoolがあったりすることです。
さらに1つの大学が多くの巨大なキャンパスを持っていて、一つのキャンパスだけで40,000人を超える学生が在籍するところもあり、それだけで十分独立した大学に見えるマンモス校もあります(例えば、University of CaliforniaはUCLAなど10の大学群で成り立っています)。中にはキャンパス自体が街のようになっているところなんていうのもあります。
自分が専攻したい分野が、同じ大学内と言えど「ここのキャンパスにもあるし、あそこのキャンパスにもある、別のキャンパスにもある」ということが起こり得ます。それぞれのキャンパスはものすごく離れていて、ある1つのキャンパスでずっと勉強し続けたりします。そのため留学する際には、1つの大学を調べるにしても同じ分野の専攻がいくつかのキャンパスにある場合には、それぞれどういう違いがあるのか確認しなければなりません。